「遅刻」の労務管理 ~常習者対応、賃金控除、割増賃金など~


 遅刻や早退、私用外出、欠勤については、常習性の有無を問わず、日ごろから厳格な管理を徹底しておく必要があります。
 今号では、従業員の遅刻への対応について労務管理上の留意点をまとめました。
 

1.賃金のカットと「減給の制裁」

 遅刻により勤務しなかった分の賃金を控除することに、法的な問題はありません。
 就業規則や賃金規程に定めた方法で1時間あたりの賃金額を計算し、給与から「遅刻控除」などの項目で差し引くことができます(2.のように完全月給制など特に定めがある場合は除きます)。

 これに対して、例えば「遅刻・早退に対して30分単位で賃金を控除する」など、勤務しなかった時間を超えて賃金を控除する場合には、超えた分は「減給の制裁」として労働基準法の規制を受けます。

労基法91条(制裁規定の制限)
就業規則で、労働者に対して減給の制裁を定める場合においては、その減給は、一回の額が平均賃金※の一日分の半額を超え、総額が一賃金支払期における賃金の総額の十分の一を超えてはならない。

平均賃金とは、直近3ヶ月にその労働者に支払われた賃金総額を3ヶ月間の総日数で除した額をいいます(原則の計算式で、日給制・時給制の場合など例外もあります)。

  こういった場合について、通達では「就業規則に制裁の章を設け、その中に規定するなど、制裁であることを明らかにしておく方が問題を生ずる余地がないから適当である」としています。

 また、遅刻に対して減給の制裁を行う場合には、その都度、注意し、始末書を提出させるなど、事業主として改善のため指導を行っていることが前提となります。

 「数回の遅刻で(勤務しなかった時間分を超える)××の額を減給する」とする場合にも、機械的に賃金控除するのでなく、就業規則に定める制裁の一環として、法定の限度内で、必要な指導を踏まえたうえで、制裁としてのバランスを考慮したうえで実施する必要があります。



2.給与形態や労働時間制に応じた賃金控除

 完全月給制フレックスタイム制の場合、遅刻控除、欠勤控除ともできません。
 裁量労働制の場合、業務に従事した日は労使協定などで定めた時間を勤務したものとみなされるため、遅刻控除することはできません。業務に従事しなかった日については欠勤控除できます(完全月給制の場合をのぞく)。
 事業場外のみなし労働時間制では、遅刻、早退の届出があるなど明確に勤務しなかった時間が確認できる場合は、相当分をみなし労働時間から控除できるものと考えられます。労使協定にその旨を定めておかれることをお勧めします。業務に従事しなかった日については欠勤控除できます(完全月給制の場合をのぞく)。 



3.遅刻当日の割増賃金

 就業規則と36協定(時間外・休日労働に関する労使協定)にもとづき、1日の法定労働時間(原則8時間)を超えて労働させた場合には割増賃金が発生します。
 この法定労働時間の長さは実労働時間数で判断します。 このため、遅刻した当日に終業時刻を繰り下げた場合でも、1日の法定労働時間を超えなければ割増賃金は発生しません。
 


4.書面での届け出の徹底など、管理は厳格に

 社内の届出様式を用意し、原則として事前に(やむをえない場合は事後すみやかに)所定の形式で理由を書面で届出るようにします。提出先や提出期限も統一し、管理する側も面倒がらずその都度、毎回理由を確認するよう徹底します。
 本人の勤務態度の他、健康状態、生活環境の変化を把握でき、トラブルの回避にもつながります。
 就業規則等の制裁に関する根拠規定は十分に整備したうえで、理由によっては事情を聴取し、注意書・警告書の交付、始末書の提出命令など、厳格に対応していきましょう。
 
 (塩澤)

事務所ニュース2014年11月号を配信しました。

今般、事務所ニュース「人事労務トピックス2014年11月号」を配信しましたのでお知らせします。

(ブログ右上のリンクから、当事務所事務所ニュースPDFファイル配信ページをご覧いただけます。)

内容は以下のとおりです。


・「遅刻」の労務管理  ~常習者対応、賃金控除、割増計算など~

 遅刻や早退、私用外出、欠勤については、常習性の有無を問わず、日ごろから厳格な管理を徹底しておく必要があります。

 今号では、従業員の遅刻への対応について労務管理上の留意点をまとめました。

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